耳管開放症・耳管狭窄症とは
耳と鼻を結ぶ管、「耳管」は通常閉じられているものですが、物を飲み込んだとき、あくびをしたとき、鼻をかんだときなど、必要に応じて開放され、内耳の圧力を調整してくれる働きを担います。
その耳管が、常に開放されていたり、ほとんどずっと開放されている状態を「耳管開放症・耳管狭窄症」と呼びます。
原因と症状
原因
耳管開放症・耳管狭窄症の特徴として、発症前にダイエットや手術による急激な体重の減少を経験されている方が多い、というものが挙げられます。耳管を囲む脂肪組織の燃焼により、それまであった適度な圧力が失われ、耳管が常に開放された状態になってしまうためです。
もう一つの大きな原因が、ストレスです。自律神経の緊張が耳管周囲の血流循環を悪化させ発症します。また、同時に肩こり、頭痛、耳の痛みなどの症状を併発することもあります。
その他、脱水症状を起こしたときや、急性中耳炎の治療後、吹奏楽器の使用後などに耳管開放症・耳管狭窄症を発症するケースも見られます。
症状
時間帯、天気などの気圧・体調や心理的な状況によって症状の現れ方が異なります。耳管開放症・耳管狭窄症の症状は、頭を下げたり横になったときに軽くなる傾向が見られます。
- 自分の発した声が響く、大きく感じる、二重に反響してきこえる
- 自分の呼吸音がきこえる(「ごー、ごー」ときこえる)
- 耳が塞がった感じ
- めまい・ふらつき
- 難聴
耳管開放症・耳管狭窄症になった場合
自分の声が響いたり、実際より大きくきこえたりといった症状が突然現れ、しばらくすると治まり、また突然現れ、ということを繰り返していると、発声そのものが妨げられるようになります。
重症化し、コミュニケーション障害が生じるケースもありますので、できるだけ早い段階で受診することをお勧めします。
なりやすい年齢
30~40代、70~80代に多く見られる二峰性の病気です。
若い方によく見られるのが、過度のダイエット、脱水症状、ストレスによるものです。
一方で70代以降の方によく見られるのは、加齢による身体全体の機能の低下、耳管周辺の筋力の低下によるものです。
治療方法
当院では、耳管開放症・耳管狭窄症に対して、以下のような治療を行っております。
また、ご家庭や学校、職場でのお悩み、不安は、言葉にするだけで軽減されることもあります。「耳鼻科だから」と気にせずに、診療の際には可能な範囲でお話しください。
生活習慣の見直し
患者様には、これまで築いてきたそれぞれのライフスタイルがあり、またお仕事によっては実践が難しい項目もあるかと存じます。すべてをいっぺんに実行するのではなく、できることから少しずつ取り組んでみてください。
朝
特に朝食が重要で、たんぱく質(卵、納豆、豆腐、ベーコン、ハムなど)を積極的に摂取してください。適切な食事を摂ることで、体温が上昇し自律神経が「ON」へと切り替わります。
太陽の光を十分に浴びる、冷水で顔を洗う、歯をしっかり磨くといったことも、自律神経のスイッチとなります。
昼
昼は身体を動かすことが重要ですが、デスクワークの方はなかなかそうもいきません。ときどき立ちあがってストレッチをしたり、できれば散歩などをすると良いでしょう。夏は脱水に、冬は寒冷による刺激に気をつけることも、自律神経のコントロールには重要です。
夕方~夜
夜には自律神経を「OFF」にするため、夕方から徐々に心身の緊張を取り除いていきます。好きな音楽をきく、入浴して身体を温める、読書など、リラックスできる時間を確保しましょう。
また、夕方からはカフェインを含むコーヒーや緑茶を控え、スマートフォンやパソコンの使用も、就寝2時間前を目安に最後としておきましょう。
睡眠は、しっかりととってください。
運動
楽しめる範囲の運動であれば、やり過ぎということはありませんが、苦痛を伴う激しい運動は、ストレスや脱水症状の原因となります。楽しい運動を、無理なく続けましょう。運動は全身の血流改善に効果的です。
投薬
生活習慣の見直しに取り組みながら、抗不安剤、抗うつ剤、漢方薬の他、耳管周囲の血流を改善させるためのお薬の投与などを行います。
手術・処置
生活習慣の見直しや投薬で十分な症状の改善が見られないときには、患者様のご希望を伺った上で、耳管閉鎖術、耳管内ルゴール塗布などの手術・処置を行います。
耳管内ルゴール塗布
ルゴールという薬剤を耳管内に塗布し、耳管粘膜で炎症を起こします。粘膜が一部隆起し、耳管が閉塞して症状が治まります。初回の処置後、効果は10日程度で失われますが、何度か繰り返すうちに治癒する症例もあります。
耳管閉鎖術
メローセルと呼ばれる低刺激の繊維の塊を、耳管内に挿入して耳管を閉塞させる手術です。その上で、鼓膜にチューブを挿入し、チューブを通して換気ができるようにします。耳管開放症・耳管狭窄症の症状の消失が期待されますが、メローセルがうまくフィットしない場合には、形状を変えて何度か挿入しなおす必要が生じることもあります。
治療期間
症状の程度、また治療法の選択によって異なります。
耳管開放症・耳管狭窄症の予防方法
ダイエットをする際には、運動と食事の両面から取り組み、また急激な体重減少は避けましょう。
自律神経の乱れは、耳管開放症・耳管狭窄症の発症と大きくかかわっているため、普段から生活習慣に気をつけることも重要です。
また、なるべくストレスを溜め込まないようにすることが大切です。