耳の仕組みについて
耳の構造は大きく3つに分けられ、外側から「外耳」「中耳」「内耳」とあり、外耳と中耳の境目に「鼓膜」があります。
このうちの「中耳」で起こる炎症を伴う病気「急性中耳炎」「滲出性中耳炎」などに対して行われるのが「鼓膜切開術」「鼓膜チューブ留置術」です。
鼓膜切開術とは(外来手術・チューブ挿入術について)
「急性中耳炎」「滲出性中耳炎」は通常、いずれもまずは保存療法での治療が行われます。
しかし、ひどい痛みを伴う場合、再発を繰り返す場合、保存療法でなかなか治らない場合、患者様がご希望される場合などには、鼓膜を切開(小さな穴を開ける方法)し、内部の膿や滲出液を取り除く「鼓膜切開術」を行います。
また、症例に応じて、チューブを鼓膜に通して換気を促す「チューブ留置術」を行うこともあります。中耳が継続的に換気されるようになり、膿や滲出液が溜まるのを防ぎます。
なお当院では、いずれも外来手術(入院を伴わない日帰り手術)で受けていただけます。
鼓膜切開をすると中耳炎を再発しやすい?
よく「クセになるのでは?」と心配される方がいらっしゃいますが、誤解です。よく中耳炎になるから鼓膜切開をするのであって、鼓膜切開をしたことでよく中耳炎になるのではありません。
適応される病気について
急性中耳炎
急性中耳炎に伴う発熱、耳の痛み、難聴、耳鳴りなども改善します。
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎に伴う鼻水、難聴、耳鳴り、耳の詰まり、自分の声の反響などを改善します。
治療方法
鼓膜切開術
鼓膜の表面に麻酔をかけた状態で行います。
鼓膜専用のメスで鼓膜に小さく穴を開け、内側の膿、滲出液を吸引除去することで、炎症をはじめとする症状が改善されます。
鼓膜の小さな穴は、4~5日で閉じます。ごく稀に閉じないこともあります(数%)が、処置により穴を塞ぐことができます。
※鼓膜切開術は、必ずしも1回で終わるとは限りません。2回以上必要になることもあります。
鼓膜チューブ留置術
鼓膜に麻酔をかけた状態で行います。鼓膜にチューブを通して、中耳腔の換気機能を改善し、膿や滲出液が溜まりにくく、炎症が起こりにくくなります。
チューブは2年間留置した後に抜去します。途中で脱落した場合には、再留置が必要になる場合があります。
当院では、数あるチューブの内から、「パパレラ型」という長期の留置に適したものを採用しております。
鼓膜切開術と同様、穴が残るケースもわずかに見られますが、処置により塞ぐことが可能ですのでご安心ください。
手術後の注意点
手術の当日中
- 耳に水が入らないようにしてください。
- 激しい運動は控えてください。(特に水泳)
手術翌日以降
- 手術によりすぐ中耳炎が治るわけではありません。膿、滲出液、耳だれが出てくることもあります。また、少量の血が混じっていることもあります。
- チュービングの場合、プールなどでの潜る行為は、「耳栓をすれば大丈夫」と言われていますが、中耳炎をきたすリスクが残りますのでお勧めしません。チューブが入っている場合、プールなどで潜ることは出来ません。
- 手術後も、継続的に観察していく必要があります。症状が治まったからといって、自己判断で通院をやめてはいけません。
- 鼓膜に開いた穴は通常元通りに再生しますが、ごく稀に(数%)穴が再生しないことがあります。その場合には、穴を塞ぐ処置を行います。
どのような症状の方が手術をするべきか
急性中耳炎、滲出性中耳炎の方の中でも、特に以下のような方に手術をお勧めします。
- 保存療法で、なかなか症状が改善しない。
- 保存療法を行い治ったが、再発を繰り返している。
- 強い痛み、またはその他の症状があり、日常生活に支障をきたしている。
- (お子様の場合)夜中に泣き叫ぶほどひどい痛みがある。